前回ノイズキャンセリングヘッドホンの比較記事を書きました。
悩んだ結果「WH-1000XM3」を購入し、1~2ヶ月ほど使用してみたのでレビューしていきたいと思います。
開封
付属品
付属のキャリングケースはしっかりしたセミハードケースになっており、外側にはメッシュポケットがついています。
キャリングケース内にはヘッドホンをコンパクトに折りたたんで収納することができます。
ケース内には付属品を入れておくスペースもあり、全部で
- ヘッドホン本体
- USB Type-Cケーブル(20cm)
- ヘッドホンケーブル(1.2m)
- 航空機用プラグアダプター
が収納されています。
外観
デザインはフラットでモダンでスタイリッシュな方向性。全体的な色調的も落ち着きがありマットな質感で、ロゴとマイク部分に入っているアクセントカラーも鈍いオレンジ、ブロンズのような色合いで高級感があります。
ユニット上部に金属調のリングで強調されているのが外側用のノイズキャンセリング機能用マイクになっており、そこからノイズの収音を行います。内側の見えない部分にも内側用のマイクがあります。
物理的なボタンは左ユニットにある「電源ボタン」と「NC/AMBIENTボタン」2つのみ。ボタンの他にもユニット下部は左側にヘッドホンケーブル接続用のINPUT端子、右側にはUSB Type-C端子があります。
右側のハウジング表面が「タッチセンサーコントロールパネル」になっており、再生時の操作などはこの部分をタッチ操作して行います(操作方法は後述)。
イヤーパッドは前モデルの「WH-1000XM2」よりも柔らかい低反撥ウレタンを採用しており、接地面積も約20%向上しています。
ヘッドバンドも1世代前の「WH-1000XM2」より分厚くなっており、よりと頭を添わせるような形状になっています。
ヘッドバンドの長さを調節できるスライダーは金属素材になっていて堅牢性があり、最大で約35mm引き出すことができます。
接続・設定・操作方法
起動後の接続作業や、基本的な設定・操作方法などについてみていきます。
Bluetooth接続
電源ボタンを約7秒間押し続けることでペアリングモードになるので、その状態で各端末から接続します。
ちなみに接続機器側に[WH-1000XM3]と[LE_WH-1000XM3]の両方が表示される場合は[WH-1000XM3]に、片方だけ表示される場合は表示されている方に接続してください。
NCオプティマイザー
個人の装着状態(髪型、メガネの有無、装着ズレなど)をヘッドホン内のマイクで検出して、その人に合ったノイズキャンセリング特性に最適化する「NCオプティマイザー」という機能があります。10秒程度で完了するため、最初に実行しておくといいでしょう。
電源ON・ノイズキャンセリングが有効になっている状態で、NC/AMBIENTボタンを約2秒間押し続けると実行されます。
ノイズキャンセリング&外音取り込み機能
ヘッドセットの電源を入れると、ノイズキャンセリングONの状態で立ち上がり、最後に接続した機器に自動的に接続されます。
NC/AMBIENTボタンを押す毎に「アンビエントサウンドモード(NC:OFF / AMBIENT:ON)→両方OFF(NC:OFF / AMBIENT:OFF)→ノイズキャンセリングモード(NC:ON / AMBIENT:OFF)に戻る」という順番で切り替えられます。
どのモードを使用している場合でも、右ハウジングのタッチセンサーコントロールパネル全体を手で触れている間「クイックアテンションモード」が有効になります。クイックアテンションモードとは、一時的に再生中の音楽や通話音などの音量を絞り、外音を取り込んで周囲の音を聞くことが出来る機能です。
触れている間のみ有効になり、手を離すと元の再生モードに戻ります。
音楽再生や着信時の操作
再生時の操作は右側ハウジングのタッチセンサーコントロールパネルにて行います。
曲送り/戻し・再生/一時停止・音量調節や、着信の受話・終話の操作などが可能です。
「Headphones Connect」で出来ること
「Headphones Connect」とは、対応しているソニー製のヘッドホンやイヤホンに対して様々な設定を行えるアプリです。
できることは
- 接続しているヘッドセットの状態確認(型名・電池残量・Bluetooth接続コーデック)
- 「アダプティブサウンドコントロール」のON / OFF
- 外音取り込み機能のON / OFFや微調整
- ノイズキャンセリング → 風ノイズ低減 → 外音取り込み(レベル1~20)
- ボイスフォーカス機能のON / OFF
- NCオプティマイザー(ノイズキャンセリングの最適化)の実行
- 音楽が聞こえる方向の変更(Front / Front Right / Front Left / Rear Right / Rear Left)
- 音響効果の設定「サラウンド(VPT)」(Arena / Club / Outdoor stage / Concert Hall / OFF)
- 音質設定(イコライザー)
- 再生中の曲の操作
- 音質優先モード / 接続優先モード の切り替え
- DSEE HX(高音域補完)の ON / OFF
- [NC/AMBIENT]ボタンの機能を変更(外音コントロール / Google アシスタント / Amazon Alexa)
- タッチセンサーコントロールパネルのON / OFF
- 自動電源オフ設定(オフしない / 5分 / 30分 / 1時間 / 3時間)
- 通知音と音声ガイダンスのON / OFF切り替えや言語変更
とかなり多いです。ひとつひとつ説明するとかなり長くなってしまいそうなので、今回は割愛します。
詳しくは下記の公式ペルプガイドとサポートページを御覧ください。
実際使ってみて良かったところ
実際に使ってみて良かった部分をあげていきます。
ノイズキャンセリング性能の高さ
「業界最高クラスのノイズキャンセリング性能」という触れ込み通りの強力さで、ここを一番の目的として購入したのでかなり満足です。
特に低周波に対しての打ち消し方は素晴らしく、機械の駆動音のようなものはガッツリ消えます。使用中に少し外してみると「こんなにうるさかったんだな」と驚かされる。
ノイズキャンセリングヘッドホンでよく言われる特有の違和感・圧迫感みたいなものは完全にないと言えば嘘になりますが、使っているうちにすぐ慣れるレベルでした。
ノイズキャンセリング性能がいいことにより、むやみに再生音量を上げなくて済み、結果的に耳にも優しく聴き疲れしにくくなるのも思わぬメリット。
読書中などに何も再生せず、ノイズキャンセリングモードで耳栓代わりに使用するみたいな使い方もかなりおすすめです。自分は雨音を流したりしてます。
装着感
前モデルの「WH-1000XM2」があまり装着感は良くないイメージだったので少し心配していましたが、完全に杞憂でした。
外観部分でも触れたとおり、イヤーパッドとヘッドバンドが大幅に見直された上、約20gも軽量化されているため、長時間つけていても疲れません。
メガネを着用したまま装着していても全然問題ないです。
装着感に関しては、開発者インタビューでも重点的に触れられているので下のリンクから見てみてください。
全体的な使い勝手の良さ
全体的に「隙が少ない完成度」だなと感じます。
電池持続時間がノイズキャンセリングONの連続再生で30時間もあるのでこまめに充電しなくてもいいですし、いざ充電が切れてしまっても10分充電で5時間も使用可能になるクイック充電に対応しているので困ることがありません。
ちなみにノイズキャンセリングOFFの場合は38時間も連続再生が可能。
対応コーデックも「SBC, AAC, aptX, aptX HD, LDAC」と豊富ですし、Bluetooth接続も安定していて、いざとなれば「音質優先モード」から「接続優先モード」に変更も可能。
付属のキャリングケースはかなりしっかりした作りで、本体の折りたたみ機構もあるため比較的コンパクトに持ち運べる。
「Headphones Connect」で設定できることが多いので融通が利く。
などなど、ワイヤレスヘッドホンとして快適に使用するための基礎的な部分がしっかりしているなと感じました。
気になるところ
基本的な使用感には満足しているのが前提ですが、使っていると「惜しいな、少し気になるな」と思う部分がいくつか見えてきました。褒める様な記事はすでにいっぱいあると思うので、重箱の隅をつつくというか、ちょっとシビア目にあげていきたいと思います。
高い気密性による蒸れ
「WH-1000XM3」はイヤーパッドが「エンフォールディングストラクチャー」という気密性の高いものになっています。
包み込む装着感を実現するエンフォールディングストラクチャー
WH-1000XM3 特長 : その他の特長 | ヘッドホン | ソニー
低反撥ウレタンフォームを立体的に縫製したイヤーパッドと、イヤーパッドが内側に倒れ込む構造を採用し、耳を包みこむような快適な装着性と高い気密性を実現。音漏れを低減し、重低音域の迫力をあますところなく再現します。
メガネの上から装着しても痛くなく、音漏れが少なく、ノイズキャンセリングOFFでも遮音性が高いなど良い部分も多々あるのですが、その反面長時間着用しているとちょっと蒸れてくるような感覚があります。
涼しい時期はあまり気にならないかもしれませんが、夏場などはちょっと心配。
調べてみると、mimimamoというヘッドホンカバーを装着することでサラサラとした肌触りになり、蒸れの軽減が出来るようなので、そのうち買ってみようと思います。
Bluetoothマルチポイントの仕様
マルチポイント自体はあるのですが、音楽再生機器(A2DPプロファイル)と通話機器(HFPまたはHSPプロファイル)それぞれ1台ずつへの同時接続にしか対応していません。
そのため、例えばスマートフォンに接続して再生している状態でタブレットに切り替えたいとなった場合、スマートフォン側で接続解除の操作を行った後タブレット側で接続する手間が必要になります。
電源ON時に前回接続していた機器に自動で接続されるため、タブレットで使いたいなと思って電源を入れる → スマートフォンに自動接続 → スマートフォン側で接続解除 → タブレットで接続操作、みたいなことも結構あります。
BOSEの「QC35 II」や「NCH700」のようにA2DPプロファイル2台へのマルチポイントに対応している機器が羨ましい部分です。
音質について
商品ページやインタビュー記事でも「高音質ノイズキャンセリングプロセッサーQN1」に内蔵DAC&アンプ、専用設計40mmHDドライバーユニット、LDAC接続によるハイレゾ音質再生、DSEE HXでのハイレゾ相当へのアップスケーリングなど、かなり高音質という部分に力を入れていることが伺えます。
ワイヤレスでも上質な高音質を実現
・「高音質ノイズキャンセリングプロセッサーQN1」に内蔵のDACとアンプによりワイヤレスでも高品質な音を表現ワイヤレスでもハイレゾ級(*)の高音質を楽しめる
・ワイヤレスでもハイレゾ音質(*1)で楽しめるLDAC対応
・DSEE HXでハイレゾ相当の解像度にアップスケーリング高音質を実現する本体設計
WH-1000XM3 | ヘッドホン | ソニー
・専用設計40mmHDドライバーユニット
・アルミニウムコートLCP振動板
調べてみても音質面を褒めているレビューはかなり多く、実際そうなんだとは思いますが、個人的に気になる部分もあります。
NCのON/OFFで音の傾向が変わる
まず特徴として、ノイズキャンセリングのON / OFFで音の傾向が結構変わります。
わかりやすく言うと、NC-OFF時はフラット気味で、NC-ON時は低音寄りのドンシャリ気味という感じ。
特徴的なのはNC-ON時で、レビューでもよく「迫力のある音」や「パワフル」などの言葉で表現されていますが、個人的にはこれがあまり好みではありませんでした。
「バランスのいい」という表現もよく見かけて、たしかに全体的にちゃんと鳴っているといえばそんな気もしますが、味付けとしてはかなり低音寄りに感じます。この低音が生っぽくないというか、機械的に盛ったような不自然な音に聞こえて、音の抜け感もあまりよくないような印象。
「Headphones Connect」のイコライザーで調整可能
そこで活躍するのが「Headphones Connect」。
SONYの場合はアプリ上のイコライザーから「Bright/Excited/Meiiow/Relaxed/Vocal/Treble Boost/Speech」の8種類のプリセットから選べるほか、自分で周波数帯域毎の調節や「CLEAR BASS」の強弱などの細かい設定をCustomプリセットとして登録することが出来ます。
BOSEの場合はイコライザー設定自体が無かったり、SENNHEISERの場合はかなり大雑把な調整しか出来ないので、ここはSONYの大きな利点と言えるでしょう。
音質についてのまとめ
まとめてみると
- ノイキャンON時は低音寄りの味付けなのでフラット気味や抜け感のいい音が好きな人は好みに合わないかも
- とはいえワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホンというジャンル内で考えると高音質であるのは多分間違いない
- 他メーカーと違ってアプリのイコライザーで細かくカスタマイズ出来るので融通は効く
という感じでしょうか。
音質は難しいところで、他のノイズキャンセリングヘッドホンや同じ価格帯のワイヤレスヘッドホンを視聴したわけでもなく、かなり好みの問題も出てくるので一概には言えない部分があります。
ただ「ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン」という性質上、そこまでシビアに音質を求める環境向けではないと思いますし、基本的に音質面で大満足みたいなレビューが多いのも別に嘘ではないと思います。
そもそも自分が普段室内で愛用しているのが開放型のHD650で、あまり比較対象として丁度いいものを所持してないし、そんなに音質について精通してるわけでもないので、あくまで一例として参考にしていただけるといいかなと思う所存。
有線接続での操作制限(電源ON時)と音質劣化(電源OFF時)
ヘッドホンケーブル(ステレオミニプラグ)を接続することにより、有線接続にて使用することができます。
電源ONで有線接続の場合、NC/AMBIENTボタンでのモード切替は通常通り使用でき、タッチセンサーコントロールパネルは、クイックアテンションモードのみ使用できます(音量調節、再生/一時停止などの操作は再生機器側で行う)。音の傾向もBluetooth接続時と同じで、よく聞くとちょっと良くなってる程度。
電源OFFで有線接続の場合、NC/AMBIENTボタンでのモード切替やタッチセンサーコントロールパネルの使用ができなくなるのは当たり前ですが、同時に音質もかなり悪くなります。
おそらく電源OFF状態だと「高音質ノイズキャンセリングプロセッサーQN1」に内蔵のDACとアンプが無効になるのが原因なのかなと思います。
基本的にワイヤレスで使いますし、有線接続時も電源ONにすればいいだけなので電源OFF有線接続時の音質が悪くても問題ないと言えばないのですが、ちょっと残念ではあります。あと電源ONでもタッチセンサーコントロールパネルによる再生操作が制限されるのはちょっと不便。
ちなみに仕様上、有線接続時1kHzでのインピーダンスは
- POWER ON時: 47 Ω
- POWER OFF時: 16 Ω
となっています。
モード切替設定の柔軟性
ハウジングを手のひらで覆うだけで周囲の音を聞くことが出来るクイックアテンションモードは、とても簡易的かつ感覚的で使い勝手がいいなと思う部分なのですが、状況によっては困ることも考えられます。
例えば、右手がふさがっている状態だと、左手を右側のハウジングに触れたままにしなければなりません。
そんなときはアンビエントサウンドモードを使えばいいとは思いますが
- もう一度ノイズキャンセリングモードに戻るにはNC/AMBIENTボタンを2回押す必要がある
- NC/AMBIENTボタンを押すたびに音声ガイダンスが流れ、その間再生が途切れる
という面倒ポイントがあります。音声ガイダンスはOFFにすることも出来るのですが、その場合ボタンを押しても全くの無音になるので、ちゃんと押せたのかわからないことがあります。
せっかく「Headphones Connect」という細かく設定できるアプリがあるので
- クイックアテンションモードを「一度触れるとON、手を離しても保持され、再度触れるとOFF」という方法にも切り替えることが出来るようにする
- NC/AMBIENTボタンで切り替えるモードを減らせるようにする
- もっと短い音声ガイダンスを追加、もしくは音声ガイダンスの代わりに短い通知音を選択できるようにする
などの痒いところに手が届くような設定が、本体とアプリのアップデートで可能になれば嬉しいです。
まとめ
前回の記事で調べて比較した結果、現在出ているワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホンの中で一番総合力が高いなと思って購入しましたが、実際使用してみてやはり正解だったなという感想です。
細かく惜しいところなんかもあげましたが、実際は結構便利に使えています。
なかでもノイズキャンセリング性能には驚かされ、わざわざノイズキャンセリングヘッドホンに絞って考えた以上、最適な選択だったと思います。
BOSEの「QC35 II」「NCH700」やSENNHEISERの「MOMENTUM Wireless」との比較は前回の記事を参考にしてみてください。
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